ベジファースト

 前回の記事で、野菜の食物繊維含有率は実はきわめて少ない事を書いた。

野菜サラダによく使われる野菜について食物繊維の含有率を調べると次のようになる。カッコ内が含有率(パーセント)を表している。

レタス(1.0)、白菜(1.3)、小松菜(1.9)、チンゲンサイ(1.2)、キャベツ(1.8)、もやし(1.3)、クレソン(2.5)、ブロッコリー(4.4)、オクラ(5.0)、モロヘイヤ(5.9)、タマネギ(1.6)、ニンジン(2.5)、パプリカ(1.6)

ちなみにごぼうは野菜サラダではなく別の食べ方をするほうが多いが、含有率は5.9パーセントでモロヘイヤと同等、それ以外のどの野菜よりも高い。

野菜サラダとして使われる野菜の中では、ブロッコリー、オクラ、それとモロヘイヤの含有率が高く、この三つのどれかをふんだんに使ったサラダならそこそこの量の食物繊維が摂取できるが、それでも、それぞれ120g、100g、85gというかなりな量を食べないと食物繊維5gを摂取できない。

食物繊維を一日あたり20g摂取するというのがいかに大変かがわかる。

ところで、この20gという量は日本人の目標値として厚労省が提示した数字であって、理想値ではない。

理想値はもっと高く24gなのだが、日本人の食生活を考えると到達不能の高みといえる。

野菜に含まれる食物繊維に関連して、最近、「ベジファースト」なるものをよく耳にする。

「ベジタブルファースト」を略した表現らしく、食事の一番最初に野菜を食べましょうというスローガンらしい。

その目的は、野菜を最初に食べる事で、食事の後の血糖値の急上昇を避けるという事。

野菜を最初に食べると、野菜に含まれる食物繊維がその後に食べた糖質の吸収を妨げて、急激に血糖値が上がることがないという理屈らしい。

ところが、野菜、とりわけ葉物野菜の食物繊維含有率は上記のように大して高くない。ろくに含まれていない食物繊維がどうして、後に続く大量の糖質の吸収をゆっくりにするのか。どう考えても理屈に合わない。

実際、たくさんの被験者を対象に、ベジファーストといわれる食事法で血糖値の急上昇が抑えられたという検証がなされたのかどうなのか。

さらに、ネット上で検索すると、ベジファーストなるものが血糖値の急上昇を抑えるという点がすり替わり、ダイエットの一手法のように語られているサイトがたくさんある。

先に食べた野菜にほんのわずか含まれる食物繊維がその後に食べる糖質の吸収をゆっくりにするというのも理屈に合わないが、さらにそれで痩せる事に効果があるなど納得がいかない。

このベジファーストを"vegetable first diet"という英語で検策してみても海外のサイトではヒットがない。

ダイエット大国のアメリカを検索の対象にしてみても同じ。要するに日本だけの現象なのだ。

健康、栄養、ダイエット。これらに関わる情報は極めて多いが、本当に効果があるかどうか不明のものがほとんどなのではないか。