人生案内

タイトルは読売新聞の人生相談のコーナーのもの。私は毎日、30分以上かけて、新聞のかなりの部分に目を通す。

その中に、上記タイトルの人生相談のコーナーも含まれる。

回答者は複数いて、それぞれの回答には納得のいくものが多い。

しかし時折、首肯しかねるようなものもある。

6月13日付けの当該コーナーに次のような相談が寄せられた。

30代男性会社員。生きている意味や、自分の存在意義を見出せません。

(中略)

私は内向的な性格で、友人も片手で数えられるほど、他人から興味をもたれてもコミュニケーションがうまく取れないので、仲が深まることはないです。そもそも他人に興味がないのかもしれません。

ただ、所帯を持ちたい気持ちはあります。贅沢は求めていません。ありふれた平凡な家庭を築きたいのです。ところが、女性を紹介されても恋愛に発展しません。今まで2人の方とお付き合いしましたが、1週間や2か月で関係が終わってしまいました。

仕事に関しては不満ばかりで、日々転職を考えています。これといった趣味もなく、これからどのような心持で生きていけばいいのでしょうか。 

この相談に対する回答は次のようなものだった。

当欄を毎日愛読なさっている、とうかがって正直ホッとしました。手前みそですが、当欄は優秀な人生論の宝庫であります。読み続けられるうちに、いつの間にか人生の達人になられるはずです。少なくとも、あなたのお悩みを解決する方法のヒントを見つけられると太鼓判を押します。

いかかですか、あなたと同じような悩みの方に、当欄ですでに出会われたのではありませんか。あなたのご相談は特別なものではなく、多くの人に共通する悩みです。その事をまず頭に置いてください。

女性と恋愛に発展しないのは、あなたとフィーリングの会う人がまだ現れないからです。これから出会うはずです。

(中略)

私が気になるのは、仕事に熱が入らない現状です。多くの上から関心を持たれるのは、労働に喜びを感じ、熱中している男性です。女性に限らず、人は意欲満々の情熱に、魅力を覚えるのではないでしょうか。

 この回答でまず気になるのは、この人生案内の記事を読み続ければ、いずれは人生の達人になれるという点。

私もこのコーナーはよく読んでいて、読んできた年月も半端ではない。この相談者の年齢をはるかに超える。しかし私は人生の達人でもなんでもない。

人生相談の相談と回答をたくさん読んだからといって、人生の達人になどなれるはずがない。

人は様々な実体験をつみ、その上で、幾多の困難を切り抜けてこそ人生の達人となれるのだと思う。

人生相談の回答は、いわば机上の空論に過ぎない。

次に気になる点は、相談者の所帯を持ちたいという希望がかなえられないといっているのに対して、回答者がピントのずれた回答をしている事。

恋愛が結婚の前提と考えているらしい相談者に呼応するかのように、「これまでフィーリングがあう人がいなかっただけで、これから出会うはずです」と回答している。

相談者の「恋愛が結婚の前提」とする考え方自体がおかしいのではないか。

その点はおくとしても、相談者とフィーリングが会う女性が現れるはずとなぜ断定できるのか。先のことなど誰にもわからない。

仕事への不満が多く、転職も視野に入っている相談者に、仕事に熱中している人こそ魅力的なのだという回答者。

まったく回答になっていない。

人生の達人でもなんでもない私だが、相談者の悩みの大本は、現在の仕事に熱心になれない事だと思う。

結婚云々、他人とのコミュニケーション云々は単なる付け足し。

転職を考えているというが、実際に具体的な行動、活動はしているのか。そこが問題だろう。活路を見出すための具体的行動なしに不平だけを言っていても何も変わらない。

熱心になれる仕事に就く事ができれば、相談者のほかの悩みも、おのずと解決するように思う。