日本人の英作文26

goとcomeがそれぞれ、離脱関係、接近関係を表すことがわかった上で、それぞれの語の意味、素性で押さえておくべき点がまだある。
離脱関係、接近関係は話し手(自分)と、相手との位置関係が変化する状態を意味するが、それぞれの単語は、その状態変化の出発点と、帰着点を常に含んでいる。
ここでもう一度、辞書のイラストを見てみる。

(A)のイラストにある人物を左から、A1、A2、A3とし、A2の支配領域(図中の点線で囲まれた部分)から、今、A1が離脱を始めた場合、A1の行動は、goを使って表すが、A2から見て、A1の行動は、A2の支配領域を脱した瞬間、完了する。
具体例で言うと、A1とA2が同じ部屋にいて、そこでA1がA2に、"I'm going to the supermarket."と言って部屋を出て行ったすると、A1が部屋の外、あるいは家の外に出て、A2と直接コンタクトが取れない状態になった瞬間、A2は、"A1 has/is gone to the supermarket."と表現する。
これは、goが常に、その出発点である動作、leaveの意味を含意するからで、先のA2のせりふは"A1 has left for the supermarket."と同じ意味を持つ。
A2から見ると、A1が出て行った後の行動を観察できないのだから、goは瞬間的動作しか表せない。
"He's gone to the office."という文があったとして、この文は今、現在彼がオフィスにいることを意味しない。
Heが、ある場所去った後の行動は、その場に残された者には解りようがないからだ。
今ならば、離れた場所に居る人物の位置情報をリアルタイムで捕捉するGPSを使えば、その人物が、実際に行くといっていた場所に到達したかどうかを知ることができるが、英語の表現はGPSの存在など無関係の大昔から存在する。
したがって、上記の文を訳す場合、「彼は会社に行った」でもよいが、「彼は会社に出かけた」の方が正確だ。
「行った」は意味が曖昧で、目的地に到達したことも含みうるが、「出かけた」だと到達までは含まないから、goまたはgoneの意味を正確に反映する。
このgoの逆がcomeの意味だ。
イラストのA2とA3の関係で言うと、同じ家の中で、声や物音が届く範囲の行動ならば、A2はA3の接近行動を感知できるだろうが、家の外からA3がやって来るような場合、その接近をA2は知ることができない。
A3がA2の支配領域に入った瞬間、A2はA3がcomeしたことを知る。つまり、goが瞬間的完了動作、leaveを含意するように、comeは瞬間完了動作、arriveを常に含意する。
comeはある場所、あるいは人への接近動作を表すが、近づいている場所に到達しない限り、comeの動作は完結しない。
食事の準備ができたので、母親が二階にいる子供に向かって、"Dinner is ready."と叫び、それに答えて、子供が"I'm coming."と返事した場合、子供がその時に二階から降りてくる途中であることを意味しない。
この文は、"I'm arriving at the table soon."の意味で、進行形でありながら、これから行う動作を意味している。
訳すなら、「すぐ、そっち(食卓のある場所)に行きます」となる。