「つい〜する」の英訳についての考察3

「日本人の英文完全治療クリニック」のcan't help 〜ingとcan't resist 〜ingの適用基準を読んでも実際にどのような〜ing形の動詞がどちらに使われるかは日本人の感覚からはわかりにくい。
それぞれに使われる動詞にどんなものがあるかを実際の文から探したほうがよさそうだ。
検索は私がいつも使う米グーグルのBooks。グーグルの一般検索では、ヒット数が参考にはなるが、どんなものがヒットしているのか定かではない。
ノンネイティブの書いた英語が大量に混じっていると思われるのまで、あまり参考にしなくなった。
それに引き換え、Books検索では、プロ作家のそれも明らかにネイティブの書いたものなので信頼度は高いし、ヒットした文の前後を読めば、文脈も簡単に把握できる。
まず、"can't help 〜ing"を検索してみたのだがあまりヒットしない。
むしろ"can't help but 動詞原型"の使用例の方が多い。使われている動詞は"think" "fall in love"など。
"think"は英語では状態動詞としての用法と、動作動詞としての使い方の両方がある。
状態動詞の方は、感覚動詞と同じく、意識的コントロールのできない動詞の扱いなので、T.Dミントンのいうcan't help 〜ingの使用基準に合っている。
そこで、thinkと同じような認識を表すほかの動詞や、感覚動詞、感情を表す動詞ののいくつかの使用例を"can't hel but"の形でBooksカテゴリで検索してみた。
結果は次のようなものだった。

・ can't help butの使用例
1. think 70,400 2. realize 2,190 3. recognize 1,440 4. see 11,800
5. hear 4,640 6. overhear 2,230 7. feel 61,300 8. want 4,240
9. hope 2,860 10. desire 229 11. laugh 20.600 12. cry 2,410 13. watch 2,410

・can't resist 〜ingの使用例
1. buy 2.350 2. go 2,210 3. come 938 4. drink 61 5. break 286
6. eat 859 7. read 1,170 8. laugh 314 9. watch 514

上記実用例からすると、日本人として「つい〜する」の日本語を英訳する場合は、次のような例に限って使えばよさそうだといえる。
1. 「つい〜だと思ってしまう」= can't help thinking または can't help but think
2. 「つい〜だと感じてしまう」= can't help feeling または can't help but feel
3. 「つい〜が欲しくなる」= can't help wanting または can't help but want
4. 「つい〜を買ってしまう」= can't resist buying
5. 「つい〜の方に足が向く」= can't resist going
6. 「つい笑ってしまう」= can't help laughing または can't help but laugh

上記検索結果で面白いのは、ミントンの本では、誤用例にしている"can't resist laughing"が検索例で314例あるということと、動詞watchがどちらの検索例に出てくるが、"can't help"での使用例の方が多いということ。
watchはseeと違って、意識的動作動詞と考えられる。ミントンの基準によれば、can't resistで使わなくてはならないはず。
ミントンの基準はあくまで、彼の考えによる基準で、必ずしもすべてのネイティブに当てはまるわけではないということだろう。