日本人の英文解釈3

今回の課題文は次の文。

P5
If Marilla had said that Matthew had gone to Bright River to meet a kangaroo from Australia Mrs. Rachel could not have been more astonished.
訳文例: もしマリラが、マシューがオーストラリアから来たカンガルーに会いにブライトリバーに行ったと言ったなら、レイチェル夫人はこんなにも驚かなかったろうに。

一見、普通の仮定法過去完了の文に見える。しかし、この訳文例、なんだか妙な意味になっている。
had saidの部分を過去完了に合うように、「言っていた」に替えてもやはり妙。
カンガルーのことは、この文の以前の部分には何ら言及がなく、突然出てきたもの。レイチェル夫人にマシューがカンガルーに会いに行ったことをあらかじめ話していたなら、彼女はあまり驚かなかっただろうとは一体どういうことなのか。
カンガルーのことがレイチェル夫人の驚きの程度と、どう関係するのかさっぱりわからない訳になっている。
「こんなにも驚かなかった」というところも、原文には"more astonished"と、比較級で表現されているのに、訳文の方は比較級を無視した訳。
一体どういうことなのかというと、この文は普通の仮定法過去完了ではなく、ifの前のevenが省略された文法的には譲歩文と呼ばれるもの。
このeven ifに関して、文法書でその機能をうまく説明しているものを私は見たことがない。大体、譲歩構文の一つにされているが、この場合の譲歩というが、何が何に対して譲歩しているのかさっぱりわからない。
訳文例の訳者がこの文にはevenが省略されているということ、さらにはその意味するところを知らないとしても仕方がないかもしれない。
この点に関して、英英辞典を引いてみるとLongmanには次のような記述がある。

even if
used to emphasize that something will still be true if another thing happens
ex. She’s going to have problems finding a job even if she gets her A levels.

つまり、主節で述べられた事実がそのまま変わらないことを強調するために、別の、たいていは極端な、または究極の事態を提示して強調する修辞法だということだ。
上記の例文でも、成績が優秀ではない場合はもちろんのこと、たとえ成績が優秀であっても就職は難しいだろうといっている。
even ifではない、通常のif節を使った文と、even ifを使った文だと、if以下の条件が満たされない時の意味が全く逆になる。
上記の例文でも、evenを取り去り、普通の条件文として考えると、「Aの成績をとった場合には、就職が難しくなるだろう」となってしまい、何のことだかわからなくなる。
これでは、成績がAより悪いほうが仕事が見つかることになるからだ。
even ifの文は、時々evenが省略されている場合があり、見かけ上は普通のif節の文と同じになってしまう。その場合でも上記のように、通常訳を考えてみて、意味の通らない点がある場合には、evenが省略されていると理解すればよい。
さて、課題の文の場合、仮定法が用いられている。even ifと仮定法が共起するという点に関しても、このことに言及している文法書を見たことがない。
それで、私も長い間、譲歩のeven ifと仮定法は同時には使わないものだと思い込んでいた。
to be continued