腸活19

IBDは深刻な病状になる難病だ。私の親族の一人もこの病気になり、その治療にずいぶんと時間も金もかかっている。何より生活の質、いわゆるQOLが著しく下がる。

IBDは深刻ではあるが、腸に不調がある人がそのまま重症化してIBDになるわけではない。

このIBDに名前が良く似たIBSというのがある。IBSとは大腸に悪性腫瘍や感染症などによる炎症などがないにも関わらず、数ヶ月に渡って便秘や下痢、腹痛などの症状が繰り返される疾患のこと。

命を脅かす病気ではないが、長期に亘り症状が続くため、IBDと同じく、著しくQOLを下げてしまい、若い人に多く見られる。

腸内細菌学会のホームページはIBSの患者に見られる症状として「⑦腸管の粘膜透過性亢進がある。⑧感染性腸炎が回復した後に高率に感染性腸炎IBSが発症することから、腸内細菌が変化して、その異常がIBSの病因の 1 つとして重視される」とする。

腸内細菌の変化として挙げられるのがLactobacillus菌とVeillonella菌の増加であることは以前に述べた。ネットにも同様の指摘をしているサイトがある。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jim/32/1/32_1/_pdf

上記サイトの「7. IBSの腸内細菌の総合理解」として次のような記述がある。

7.IBS の腸内細菌の総合的理解 

わが国の IBS の腸内細菌を分析し,IBS 患者では,健常者よりも Lactobacillus ならびに Veillonellaが多いことを見出した。

IBS 患者では,糞便中の短鎖脂肪酸(short chain fatty acid: SCFA)の中でも酢酸,プロピオン酸,総有機酸の濃度が健常者よりも高かった.

Lactobacillus グルコースを乳酸に代謝する菌である.Veillonella は乳酸を酢酸,プロピオン酸に転換する.また,酢酸,プロピオン酸量が多いほどIBS 症状が重症化した.

乳酸、酢酸、そしてプロピオン酸のいずれもが、最近、腸内環境の良くするとして話題の短鎖脂肪酸だ。腸内環境を良くするはずの短鎖脂肪酸が多いほどIBSが悪化するというのはどう理解すればよいのか。

私の理解では、乳酸や酢酸をエサとする酪酸菌不足が原因の一つだろうと思う。菌数で酢酸産生菌+プロピオン酸産生菌>酪酸産生菌の状態があるとIBSを発症するのではないか。

こういう事態を招かないためには、酪酸菌を育成して酢酸産生菌とプロピオン酸産生菌の連合軍に酪酸産生菌が数の上で負けないように育成していく必要があるのではないのか。

それで、ネット上で「酪酸産生菌 増やす食事」というキーワードで検索しても、推奨されているのは水溶性食物繊維をたくさん摂ること、というようなものばかり。

それで水溶性食物繊維を含むものにどんな食物があるかを検索してみると、次のようなものがでてくる。

上記のサイトにあった一覧表は次のとおり。

ペクチン

レモン・オレンジなどのかんきつ類、芋類、にんじんなどの野菜
アルギン酸 昆布・ワカメなどの海藻類
ガム質 大豆、麦類
グルコマンナン 里芋のぬめり成分、コンニャク芋(市販のコンニャクは不溶性)

しかし、上記の水溶性食物繊維のほとんどは大腸の横行結腸辺りまでに乳酸菌、プロピオン酸産生菌、そしてビヒィズス菌に食べられてしまい、肝心の酪酸菌まで届かない。

戦場において、兵糧を支援物資として味方の軍に届けたいのに、途中でぜんぶ敵軍に奪われている状況と同じだ。

途中にいる敵軍に食べられることなく友軍の酪酸産生菌に無事に届く食材などあるのか。話はいよいよ今回の腸活シリーズの核心部分に近づく。